新進気鋭の不動産テック企業が今、倒産の危機にある理由
皆さん、こんにちは。
乾燥肌なので、梅雨のジメジメした感じが好きです。
笹川です。
本日は私の前職のお話を少しさせていただきたく思います。
私は大学卒業後に、
京都市で古民家のリノベーションをメイン事業とする
当時創業8年目のベンチャー企業に入社を致しました。
社長がオーストラリア育ちであったり、社員に外国人がいたり、と
良い意味でオープン・フラットな社風でとても楽しく、
業務自体もやりがいがありました。
同僚には仲良くしていただいた方が多く、
プライベートでも仕事においても恩を感じる職場でした。
しかしながら2年3ヶ月程勤めた後に、
日本社会により大きなインパクトを与えられる仕事に就きたい、
新しい業界・職種のスキルを身につけられる環境に行きたい、
と、生意気ながらですが思い、
転職を決意しました。
そこで私は各所で知名度の上がってきていた
インド出身でいわゆるユニコーンと言われたIT不動産企業をターゲットに情報を集め始めました。
転職エージェントやネットニュースからの評判は上々で、
・ソフトバンクから推定3000億程度の出資が決まっている。
・日本の不動産業界の常識をITで覆す
・インド系のエンジニアが在籍しており、技術者のレベルが非常に高い
・ボードメンバーが有名大学出身、または異業種で輝かしい経歴を築いてきている
・賃貸物件を最短翌日からスマートフォンで借りられるサービス
・世界的にホテル経営が上手くいっている会社のため財政基盤が厚い
等
目を引くキャッチコピーが並んでいました。
面接官の話では、
事業は順調で、人員拡大を急速に進めている。
オフィスは霞が関にあり、事務所費用(約1000万円/月)は高額だが、
インドの親会社名義なので、問題ない。
賃貸物件のサブリースがメイン事業で、稼働率は50%くらい。
と、言われました。
社員は外国人比率が高く、業界も前職との親和性があると思い、
また事業の可能性に魅力を感じて入社を決めました。
日本に上陸して2年目で、社員数は500名を超えていました。
しかし、
いざ入社してみると見えてきたのは、
3流企業の社内体制の典型ともいえるようなカオスでした。
火の車でした。
例えば、
新入社員に対して教育の仕組みがない、
営業部隊は個人で動くのみでチームとしての戦略がない(営業先が被ることもままある)、
高給取りが多い、
仕入れ(物件)基準が明確でない、
社内で情報共有がなされていない、
リーダーシップを取れる人がいない、
経費精算の方法がころころ変わる、
手札にある物件が全て稼働したとしても赤字になる、
十分な集客が確保できていない
等々
会社としての歪が各所に垣間見えるような状況にありました。
「2カ月後までに黒字転換しなければ、出資が打ちとめられる。
短期間で、事業単体で利益を大幅に上げることは難しい。
本当に申し訳ないが、人員削減しか会社の選択肢がない。」
入社2か月後、
私はまだ研修期間ではありましたが、
配属された大阪事業部では、
社員20名中、管理職の3名を除いて17名が会社都合退職を言い渡されました。
私はまだ20代でしたが
同僚には40代の妻子持ちの社員もおりましたので、
ダメージは大きかったと思います。
この外資系不動産会社の失敗の大きな原因は主に3つあります。
1つ目は親会社もしくは出資会社の意向を聞きすぎて、
「成長路線を選択しすぎた、規模の経済を取りに行き過ぎた、2-3年後の事業規模を想定した人員を間違ったタイミングで採用した」事。
2つ目は「不動産業界出身の転職者が少なすぎた」事。
営業するにしても、業界知識の薄い社員だけでは売り上げを上げ辛かったと思います。
3つ目は「創業メンバーが社内体制を整えていなかった。経費精算の仕組みがなく個々人が自分の欲しいもの(オフィスチェアなど)を稟議無しで購入していた」事。
当時の上司の話によると、本業で利益が出ていないのに、出資頼りで、頻繁に開催される飲み会費も会社にツケられていたそうです。
成長路線を選択する事は間違いではないと思いますが、
適切なスピード感と細かな営業計画、社員の底上げなど、
並行してハンドルすることはたくさんです。
該当の不動産会社の発展・復調を、陰ながら願うばかりです。