中古住宅再販の本質
中古住宅再販の本質
代表の伊藤です。
2026年度税制改正により、中古住宅の住宅ローン控除が大きく拡充されました。
高性能な中古住宅については控除期間が13年に延長され、借入限度額も引き上げられています。
このニュースを見て、
「いよいよ中古住宅の時代だ」
「高性能リノベーション市場が伸びる」
そう考えた方も多いのではないでしょうか。
実際、業界紙や住宅専門誌でも高性能リノベーションは非常に注目されています。
「工務店受け」も良い。
しかし私は少し違う見方をしています。
極論を言うと、
住宅ローン控除が拡充されたからといって、
高性能リノベーション市場が大きく伸びるとは思っていません。
なぜなら、中古住宅市場の本質は性能ではなく価格だからです。
少し解説していきましょう。
まず、国は空き家問題の解決や住宅ストック活用のため、中古住宅市場の拡大を後押ししています。
これは間違いなく正しい方向です。
私自身も今後の住宅業界において、中古住宅市場は主戦場の一つになると考えています。
しかし、ここで見なければならないのは制度ではありません。
顧客です。
中古住宅を購入する人はどんな人なのか。
ここを理解しないと市場は見えてきません。
中古住宅購入層の多くは、
・家づくりのタイミングが少し遅れた子育て世代
・新築に強いこだわりがない
・家は中古で十分という価値観を持つ
・一次取得者が多い
という特徴があります。
そして彼らが最も重視するのは、
・価格
・広さ
・生活に直結する設備の新しさ
です。
断熱等級やUA値を最優先に考えて住宅を探している人は、実際にはそこまで多くありません。
例えば新築住宅が5,000万円するエリアがあったとします。
中古住宅購入層は、リフォーム済みで3,500万円前後だから魅力を感じます。
もし4,500万円になればどうでしょうか。
多くの人は、
「それなら新築を買う」
と考えます。
これが中古住宅市場の現実です。
だから中古再販事業では、どうしても築30年~40年前後の物件が中心になります。
価格差を作らなければならないからです。
しかし築30年~40年の物件は、多くの場合、
・長期優良住宅
・低炭素住宅
・ZEH水準省エネ住宅
・省エネ基準適合住宅
には該当しません。
もちろん性能向上リフォームによって認定取得を目指すことは可能です。
しかしそのためには、
・内窓
・断熱改修
・玄関ドア交換
・各種計算
・証明取得
などが必要になります。
当然コストも手間も増えます。
するとどうなるか。
中古住宅の最大の武器である価格メリットが薄れていきます。
ここが高性能リノベーションの難しいところです。
業界では人気があります。
住宅会社も好きです。
住宅専門誌も特集します。
しかし顧客が本当に求めているものと一致しているかというと、必ずしもそうではありません。
さらに難しいのは、
性能を重視する人ほど新築と比較することです。
性能を求めるのであれば、
中古住宅を大規模改修するより、
最初から高性能な新築住宅を建てた方が良い。
普通はそう考えるでしょう。
つまり、
価格重視層には高性能化が響きにくい。
性能重視層には新築と比較される。
この構造があるのです。
だから私は、
高性能リノベーションで高収益を維持している会社が少ないのは当然だと思っています。
商品が悪いのではありません。
市場が限定されるのです。
高性能リノベーションは必要な商品です。
今後も一定の需要はあるでしょう。
しかし、
「住宅ローン控除が拡充されたから高性能リノベで受注が増える」
というほど単純な話ではありません。
私は中古住宅再販の本質は、
性能競争ではなく、
仕入れ力と商品化力
だと思っています。
どれだけ良い物件を仕入れられるか。
どれだけ顧客が欲しい状態に仕上げられるか。
そして新築との価格差を維持できるか。
ここが利益を決めます。
住宅ローン控除の拡充は間違いなく追い風です。
しかし工務店経営者が見るべきなのは制度ではありません。
制度によって顧客がどう動くのか。
そこです。
中古住宅市場は今後間違いなく大きくなります。
だからこそ業界受けの良い商品に飛びつくのではなく、
市場の本質を見ながら戦略を組み立てていきたいものです。