最低賃金上昇への対応について(後半)
こんにちは。
今回は前回に引き続き、最低賃金上昇に伴う対応をテーマに、
特に中小企業が取るべき具体的な方法をいくつか挙げさせていただきます。
と、その前に…
本テーマの重要性を改めてお伝えします。
「最低賃金上昇における対策」は、
・義務さえ守っていればよい
・今回応急処置をすれば当面は問題ない
と思われている経営者様がおりましたら要注意です。
義務を守ることは最低ラインです。
これを満たしていれば罰せられることはありません。
しかし、働いている社員や就職を考えている求職者から見たら、、
とても魅力的な環境には見えないことでしょう。
人材不足が構造化する中、今後ますます人材の採用や定着が企業存続のカギとなります。
義務は当然果たした上で、会社にかかる負担は極力減らし、
ただし他社に比べて魅力的な要素も作り上げることが重要となります。
また、一時的な問題ではないことも非常に重要です。
昨年10月に過去最大の最低賃金の上昇があり、全国平均が1,121円となっている現在ですが、
政府は2030年までに全国平均1,500円という目標を掲げており、まだまだ上がり続けることは必至です。
毎年のように対策しなければならない状況において、
日本商工会議所の調査によると、
「最低賃金引上げに対して負担が大いにある」と回答した企業が7割を超えており、
特に中小企業においては「賃上げ疲れ」という言葉もささやかれている中で、
2割近くが賃上げによって「休廃業を検討する」と答えています。
上手く対応や適応をしていかないと大きな痛手となり得る問題です。
さて、具体的な対策に関してですが、
もちろん一番良いのは、
商品やサービスの付加価値を強化することで、販売価格を上げていくことです。
もしくはAIやデジタルツールを活用することで生産効率を向上させていくことです。
しかし、
「そんなことができているならとっくにやっている」
と声が聞こえてきそうです。
ここでは「人事制度の変更」によって生産性が変わらずとも
対応できるいくつかの方法をご紹介していきます。
- 残業時間の削減
上記で「生産性が変わらずとも」と述べているくせに、
早速、生産性の向上が必須な内容となりますが、ひとつ目は残業時間の削減です。
主に固定残業制度を実施している会社に当てはまります。
例えば大卒初任給の基本給が180,000円だとします。
これに固定残業時間25時間が別途加算されていたとします。
180,000円+(180,000円/170時間)×25時間×1.25
≒ 213,100円となります。
※年間休日110日で計算
さて、現在の時間給は180,000円/170時間≒1,059円となっており、
地域によっては最低賃金を下回ります。
仮に最低賃金が1,109円の地域の場合
50円×170時間=8,500円の昇給が必須となります。
つまり、
180,000円+8,500円=188,500円が基本給となり、
固定残業代を含めると、
188,500円+(188,500/170時間)×25時間×1.25
≒ 223,160円 となります。
しかし、もし固定残業時間を20時間にすることができたとしたら、、、
188,500円+(188,500円/170時間)×20時間×1.25
≒ 216,220円 となり、元々の213,100円と比べても3,120円の昇給で済むことになります。
このように固定残業時間を削減することで、
基本給を上げたとしても会社の負担を減らすことができます。
ただし、結局残業が多くて20時間を超える月が多くなるような状況では負担は増しますので、
現状の残業時間や削減余地の把握、無駄な残業をなくすための改革が必須となります。
無駄な残業時間の削減は会社の負担を減らすだけではなく、
労働基準法の遵守や社員エンゲージメントの向上ならびに生産効率の向上にもつながることになるので、
併せて改善を図ると良いでしょう。
- 報酬制度の一部組み込み
次に賞与やインセンティブなど報酬を一部基本給に組み込む対応が効果的です。
賞与やインセンティブがどれだけ魅力的な金額であったとしても、
基本給など基本月給が最低賃金を下回っては労基違反となります。
そこで、賞与やインセンティブの比率を少し引き下げ、
その分を基本給UPに繋げることが最低賃金上昇の対応となります。
その際は、報酬制度だけを切り取ってしまうと改悪になるため不満が出る恐れがあります。
しっかりと社員に変更点と変更によるメリットを説明し、納得してもうことが重要です。
大手企業の中でも「賞与の給与化」という
賞与の全額もしくは一部を基本給に組み込む制度を実施しており、
従業員からすると生活の安定、企業からすると採用力強化にもつながるため、
いずれは国内企業のスタンダードになる可能性もあります。
- 手当の組み込み
また、「必ずではないが基本的には支給する手当」を基本給に組み込むことも効果的です。
例えば欠勤なしの月に支給する「皆勤手当」や「条件付きの住宅手当」などが当てはまります。
これらの手当は支給しない月(人)も存在するため、
支給しない月(人)でも最低賃金を超えていなければなりません。
このため、基本的には支給するのであれば基本給に組み込むことで、
最低賃金対策にすることが可能です。
できる限り欠勤して欲しくないなど明確なメッセージがある場合には効果的な制度ではありますが、
欠勤を査定に反映させるなど、別の方法も可能です。
- 若手支援制度
最後に若手のみに該当する手当を支給する対策です。
最低賃金を下回る可能性がある大半は新卒など若手社員になります。
そこで、「キャリア形成支援手当」や「若年層育成支援手当」などの名目で、
若手のみに該当する手当を支給することで、対策が可能となります。
この場合には注意点が2つあります。
まずは、「入社3年以内かつ25歳未満の社員のみ該当」のように
支給対象条件を明確にし、条件から外れた場合には支給がなくなることを明記する必要があります。
また、入社3年目の社員が4年目に突入した際に、
手当がなくなることで給与が下がる現象が起こらないように設定する必要があります。
そのためには、1年目から3年目にかけて徐々に支給額が下がり、
昇給額から手当の減額分を差し引いた金額がプラスになるようにすることをお薦めします。
例えば平均6,000の昇給がある場合、
初年度:12,000円の手当を支給
2年目:8,000円の手当を支給
3年目:4,000円の手当を支給 とすると、
毎年6,000円の基本給が上がり、手当が4,000円減ることで、
月給は2,000円上がることになります。
このように支給額に段階をつけることで、
逆転現象を防ぐことが可能となります。
いかがでしたでしょうか。
実際には、各社様の状況によって、取るべき対策は変わります。
ご不明点やご相談などありましたら問い合わせください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
後藤