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最低賃金上昇への対応について(前半)

 

こんにちは、後藤です。

今回は、ここ最近相談が激増している「最低賃金上昇に伴う対応」について

非常に長くなるため2回に分けて述べていきます。

 

この2ヶ月間(10月・11月)は引き上げのタイミングだったこともあり、

・若手社員の給与が最低賃金を下回ってしまったから変更しないといけない

・引き上げによって賃金テーブル自体が機能しなくなってしまったから見直したい

・上記変更に伴い、採用時の給与も見直さないといけなくなった

などの相談が相次ぎました。

 

この記事があがるころにはすでに対応済みの方も多いかもしれませんが、

ひとまず応急的な対策をされた方もいらっしゃると思います。

 

また、来年も再来年も同じような(もしくはそれ以上の)引き上げが予測されているので、

今後のためにもぜひ参考にしていただければ幸いです。

 

それでは本題へ入っていきます。

 

 

2025年10月1日より(一部地域はそれ以前に)、

全国47都道府県すべての地域で最低賃金の大幅な引き上げが実施されました。

 

近年は毎年大幅な増加が見られましたが、今回はそれを遥かに上回る金額となり、

全国加重平均は時給1,121円となり、前年度比66円の上昇となりました。

(都道府県によっては最大82円の上昇)

 

そして今回の改定で、日本全国すべての地域で最低賃金が1,000円を超えたことになります。

高校生のころ、780円でアルバイトをしていた私からすると、本当にうらやましい限りです。

 

しかしまだまだ序の口です。

 

恐ろしいことに、政府は2030年までに最低賃金の全国平均を1,500円まで引き上げると公約しており、

そのためにはあと4年間で379円の引き上げが必要となります。

 

つまり、、

年平均94円の引き上げを予定しているということになります。

 

今回でさえ、多くの企業が最低賃金上昇対策に奔走しているのに、

さらに大きな改定がまだ数年間続くことになります。

 

もちろん、最低賃金の上昇自体は決して悪いことではありません。

国民がより安全に安心して暮らせる社会の実現のためにはかかせないことだと思います。

 

また、企業にとっても悪いことではなく、より発展していくきっかけにもなり得ることと思います。

なぜなら、最低賃金上昇への対策として、最大であり最良の対策は「生産性の向上」となります。

 

実際に「生産性」に関して、日本は他の先進国に対して後れを取っており、

大幅な改善が求められており、生産性を向上するための良いきっかけにもなり得ます。

 

例えばDX化の推進やスキルの向上などにより各自のパフォーマンスを最大化することが、

もっとも健全で進むべき道であることは間違いありません。

 

しかし現実問題として、この最低賃金の引き上げは中小企業に対して様々な悪影響をもたらします。

 

その最も大きな影響は、「若手社員(もしくは低賃金の社員)への対応による大幅な昇給」=「人件費の負担増」

になると思います。

 

まだ戦力になるには時間がかかるような若手を採用する場合、

中小企業ではできる限り人件費を抑えるために最低賃金に近い金額を設定することが多いと思います。

 

もともと最低賃金が1,050円の地域だったとして、

・年間休日110日

・1日就業時間8時間の場合

月間就業時間は

(365日-110日)×8時間/12カ月=170時間となります。

 

これに最低賃金1050円をかけると、

1,050円×170時間=178,500円が最低月給となります。

 

この金額を超えるために179,000円で雇ったとします。

ところが、1,050円から1,120円に70円引き上げられたとすると、

1,120円×170時間=190,400円が最低月給となります。

 

この時点で11,400円ほど最低月給を下回っているため、労基違反となってしまいます。

 

そのため、最低でも11,400円は月給を増やさなければならなくなります。

※残業代で超えたとしても意味がありません。最低賃金はあくまでも時間給によって計算されます。

 

また仮に固定残業制度を実施している場合にはさらに大きくなります。

 

・月給:179,000円

・固定残業時間:25時間

の場合

固定残業手当が、

179,000円×25時間×1.25/170時間≒33,000円となるので、

月給は 179,000円+33,000円=212,000円となります。

 

最低賃金上昇に対応するために、月給を190,400円に昇給させた場合、

固定残業手当は、

190,400円×25時間×1.25/170時間=35,000円となり、

月給は、225,400円となります。

 

元々の金額からすると、13,400円の昇給となります。

 

手当を省いた月給が1年間で13,400円昇給する社員は少ないと思いますが、

この先数年間はこれを毎年実施しなければなりません。

 

また、さらに二次被害が発生することもあります。

 

仮に今年入社した社員の月給を上記のように13,400円引き上げたとします。

2年目の社員も同様に最低賃金を守るためにある程度の引き上げを行う際に、

ギリギリのラインにしてしまうと1年目の社員と同じ給与になってしまいます。

 

これでは2年目の社員は納得しません。

 

1年目の社員と比べてプラス数千円高くなるように設定する必要があります。

 

しかし、そうすると今度は3年目の社員の給与を追い越してしまう、

いわゆる逆転現象が起こる可能性があります。

 

このように若手を上げればよいだけでなく、連鎖的に上げていく必要があり、

もともと作り上げていた給与のルールや賃金テーブルが崩壊してしまうことになり兼ねません。

 

さて、このような状況をどのように対策していくのか。

今回は長くなりましたのでここまでとさせていただきます。

 

ある程度の負担は必要となりますが、

なるべく摩擦を生まず、負担を軽減しながら対応していくための方法を次回お伝えしていきます。

 

緊急で対策をする必要がある会社様はお問い合わせください。

状況に合わせた具体的な解決策を提示させていただきます。

 

 

後藤

 

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