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「雨が降れば、人はなにげなく傘をひらく。」

 

「雨が降れば、人はなにげなく傘をひらく。」

 

これは、かの松下幸之助さんが残した言葉です。

ごく当たり前のことですが、日々の生活の中で私たちはこの「当たり前」の行動を無意識に行っています。

雨が降るという変化に対応し、濡れないように傘をひらく。

これは、私たちの身を守るための自然な準備であり、大切な行動です。

 

しかし、この「当たり前のことを当たり前にする」という姿勢は、

企業経営においてこの当たり前が意外と難しくなりがちで、それが原因で失敗することも少なくありません。

 

例えば、商売の基本中の基本。「100円で仕入れたものを110円で売って利益を出す」。これは誰もが知っている原則です。

逆に、「100円で仕入れたものを90円で売ったら損をする」というのも、小学生でもわかる理屈です。

 

しかし、これが実際のビジネスになると、なぜか「当たり前」ができなくなってしまうことがあります。

目先の利益や、複雑な状況に惑わされて、このシンプルな原理原則を見失ってしまうのです。

 

松下幸之助さんは、この「当たり前」がいかに大切かを、あるエピソードを通じて私たちに教えてくれます。

 

松下幸之助さんはある時、名古屋の営業所に出張で訪れました。

出迎えた営業所長と共に車に乗り込み、街を走っていた時のことです。

幸之助さんは、車窓から見える風景について、このビルは誰が建てたのか、あの店はどうなっているのかなど、地元の所長に質問を投げかけました。

所長もそれに丁寧に答えていたそうです。

やがて、窓の外に大きな松下電器の広告塔が見えました。

しかし、その広告塔は、色が剥げ落ちて見るに堪えない状態だったのです。

それを見た幸之助さんは、所長に尋ねました。

「君はあれを毎日眺めているだろう。あの広告塔の件は、担当部署に伝えたのか?」

すると所長は、「あれは広告担当の部署の仕事ですので、私は何もしておりません」と答えました。

この言葉を聞いた幸之助さんは、激しく叱責しました。

 

所長の気持ちは、正直なところ「わかる」という人もいるかもしれません。

広告のことは広告部の仕事で、営業とは畑違いだと。

私もそう思ってしまうかもしれません。

 

しかし、ここに組織の「不思議な落とし穴」があります。

同じ会社の人間なのに、自分の部門とは関係ないからと見て見ぬふりをしてしまう。

幸之助さんの頭の中では、松下電器の社員である限り、部門が違えど、

会社の顔である広告塔の色が剥げているのを見たら、

「担当に連絡して早く直した方が良い」と進言するのは、ごく自然な「理」に基づいた行動だったのでしょう。

まさに「雨が降れば傘をひらく」ように、問題があればそれを解決しようと動くのが当たり前、ということなのです。

 

全ての社員が「これは自分の会社の問題だ。自分が変えるきっかけを作ろう」という意識を持てば、

会社はもっと良くなります。

 

これは「自然の理」なのに、組織の中ではなかなかできないのが現状です。

 

人間は誰しも間違えることがあります。

でも、たとえ間違っても、後になって「あの時こうすべきだった」という「理」を悟ることが大切です。

 

「雨が降れば、人はなにげなく傘をひらく。」

 

この言葉が示すように、昨日よりも少しでも良い行動ができるようになること。

それが、企業が長く続き、社会に貢献し続けるための第一歩です。

大きな成功も、実はこうした一つひとつの「些細なこと」の積み重ねから生まれるのではないでしょうか。

 

田村

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