ラストコンパスの秋岡です。
先日、とある住宅会社の経営者から「若手社員の定着」について相談を受けました。
若手の採用はできているのですが、「3年以内にほとんが離職してしまう」という課題でした。
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最初に思ったのは、「採用した若手の質に問題があるのでは?」という点です。
ですが、話を聞いてみると、入社前に適正テストもしており、実際に入社してからの仕事も真面目に取り組んでいたとのこと。
次に考えたのは、「育成体制に問題があるのでは?」という点です。
こちらを確認してみると、先輩社員から臨機応変に現場で教育しているということでした。
一見して問題はないように感じるのですが、いったいどこに改善点はあるのでしょうか?
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若手が育たない原因は「自分の成長実感の薄さ」
現在の若手社員が求めているのは、
「評価」やそれにともなった「報酬」だけと考えがちですが、
「目の前の業務が自分のキャリアアップに繋がっているのか」
「自分の存在が会社や組織にどう貢献できているのか」
「自分が成長しているという実感」
も非常に重要視しています。
住宅業界の中でも、特に設計や工務は、成果が出るまでに時間がかかる仕事です。
一連の仕事を覚えるだけで1~2年はかかりますし、雑務と呼ばれるような仕事をこなす時間が長くなりがちです。
更に、達成感を感じることのできる「自分一人で業務をやりきる」まで行くとなると、3年はかかるのではないでしょうか?
この仕事を一任するまでのタイムラグが、若手にとっては「自分は何も成し遂げられていないのでは?」という焦りや不安に繋がってしまうのです。
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「成長実感」を与える仕組み作りがカギ
では、どうすれば若手の育成をうまく進められるのでしょうか?
ひとつの答えは、目の前の業務が将来に自分に繋がっていることを「実感できる仕組み」をつくることです。
例えば、
・会社が求める「中期的な成長目標」を可視化する
・「中期的な成長目標」を小さな目標に細分化し、毎月上司からフィードバックを行う
・成果以外の「行動」や「努力」も評価項目として取り入れる
・一定のレベルまで目標を達成すれば昇給する制度にする
このような仕組みがあることで、
若手社員は「自分が少しずつでも前に進んでいる」ことを感じられ、前向きに働くモチベーションを持ち続けることができます。
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成長環境は「経験の場」と「対話」でつくられる
もうひとつ大切なのが、「実践経験」と「対話の機会」をいかに多く設けるかです。
若手にいきなり大きなプロジェクトを任せることは難しくても、小さな業務の中で「自分で考え、提案し、実行する」機会を与えることはできます。
さらに、それを終えた後に、上司や先輩と一緒に「なぜうまくいったのか」「どこが改善点か」を丁寧に振り返る時間を持つことで、学びはより深まります。
この「経験+内省(ふりかえり)」のサイクルが、若手の能力開発には何よりも重要です。
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若手育成が会社の未来をつくる
住宅業界は、今後ますますお客様のニーズが多様化し、
複雑な提案力が求められる時代に入っています。
そんな中で、従来型の「上司の背中を見て育て」スタイルでは、人が育ちにくくなっています。
だからこそ、若手社員一人ひとりに目を向けた、丁寧な育成環境の整備が求められているのです。
若手社員が「この会社で成長できる」「この業界でやっていける」と心から思えるような環境をつくることが、長期的な定着と、将来の幹部候補の育成につながっていくと私は考えています。
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「若手の定着」は、単なる教育する担当の問題ではなく、会社全体の課題と言えます。
自社の未来を担う人材を、どう育て、どう支えていくのか、経営者が先導し、仕組み構築をして頂ければと幸いです。
それでは。