評価制度の落とし穴
みなさん、こんにちは!
ラストコンパスの笹川です。
今回は、社内の人事評価制度を構築及び運用する際に陥りやすい「人事評価制度の落とし穴」をご紹介します。業務上、住宅会社様の人事評価制度を支援させていただいているため、現場に即したリアルな実例を上げられればと思います。
- 運用前に評価基準をしっかり決める
「え?それのどこが悪いの?」と思われませんでしたでしょうか?実は、評価基準をがちがちに決めようとすると運用までが大変すぎて頓挫するケースがあります。例えば、部署ごとの業務一覧を作成し、それに対する熟練度を評価するとします。工務職に対して、「工程管理ができる」や「安全管理ができる」という評価項目を設けた場合いかがでしょうか。優良可で判定するときに、どうなったら「優」でどうなったら「良」なのか、また「可」はどういう状況なのか。この評価定義をすべての業務に対して設定するとなると重労働すぎて、途中で作成を止めてしまいやすいです。弊社では運用しながら定義を都度決めていく、そしてその履歴をメモとして残していくことをお勧めしています。
- 調整の余地が無い
続いて、2つ目に躓きやすい事としては調整の余地がないという点にあります。一般的にはルールにのっとって厳正にルール通り評価を下す方が公平な印象がありますが、実際はそうではありません。例えば、会社の状況や市況によって集客が落ちた場合にそれをそのまま個人の成果に紐づけた場合に不満が起きやすいです。もう少し具体的にすると、住宅営業職に対して受注棟数や利益率という評価項目を設けた場合に実績をそのまま評価すると不都合が生じる場合があります。ウッドショックや別の担当による広告宣伝の打ち間違い等は本人の責任ではないため、別で調整してあげる必要があります。調整の余地が無い評価制度は、そのまま納得感の不足に繋がり、いずれは誰も意識しなくなる結果に終わりやすいです。
- 評価者を複数設けて、評価の精度を上げる
一見すると良さそうな内容ですが、評価者を複数人設けると落とし穴になる場合があります。なぜなら、運用フローが重たくなりすぎてめんどうくさくなったり、評価者同士で評価基準が合わずに平行線をたどると管理者の評価モチベーションが下がったりするからです。例えば、半年に一度の査定に対して直属の上司がまずチェックし、それを更に上の上司が評価し、社長がダブルチェックするとした場合に社員が10人いたらどうでしょうか。それだけで時間がとられすぎて、負荷が過重になると思います。弊社では、担当に対して評価するのは実際に仕事を見ている管理者1人をお勧めしています。※ただし、社員数が50名を超えるようなビルダー様についてはその限りではない。
- 目標を本人が決める
「本人発信だと主体性も育成できてよいのではないか?」と思われたかもしれません。実際、本人が目標を決める事のメリットはありますが、本人が目標を決めて評価制度が頓挫した会社様を複数社知っています。その会社様は半年に一度、実績目標(数字的な成果目標)と業務目標(数字で計れない定性的な成果目標)を本人に決めさせ、それに対する難易度も本人に設定を任されていました。仕組みとしては、実績について、目標を上回れば回るほど大きな点数をもらえて評価が良くなり、難易度については特に評価には紐づいていませんでした。この制度の何が問題なのでしょうか。この制度の欠点としては、本人が目標及び難易度設定できるため、基本的には低めの目標を設定する方が評価が良くなりやすいということです。つまり、向上心があって高い目標を設定して結果届かずにC評価だった人よりも、低い目標を達成して結果A評価だった人を比べると、後者の方が評価が良くなりやすい制度です。また実力よりも下の目標を設定した方がクリアしやすいです。(普段から年間5棟受注している営業マンが今年度も受注目標を5棟にする等)こうなると誰も高めの目標設定をしなくなります。この状況を回避するために、弊社では役職や等級ごとに数値目標を統一することを推奨しております。
以上、いかがでしたでしょうか。
一見すると正しく思えることでも、実際に作成してみると思わぬ落とし穴に直面する事が往々にしてあります。
人事評価制度の構築・ブラシュアップを考える際にはぜひご相談ください。
それでは失礼いたします。
笹川