工期短縮による工務店のメリット
工期短縮による工務店のメリット
代表の伊藤です。
住宅会社は「工期短縮という経営戦略」に力を入れていない実態があります。
しかし、なぜか年間棟数100棟くらいから
多くの会社が工期短縮に目を向け出します。
今回は「工期短縮による工務店のメリット」についてお話ししたいと思います。
さて、まずは
住宅会社の平均的な「着工から完成までの期間」はどの程度でしょうか。
私たちの加盟店様に調査すると
70日から180日と結構な開きがあります。
ボリュームゾーンは120日でした。
そこで今度は意識調査です。
「工期短縮に力を入れているか」
という質問に対して、
「力を入れていない」という回答が最も多く、
そもそも「工期短縮=経営戦略」と捉えている会社は
かなり少ないようでした。
ではなぜ、規模の大きな会社は工期短縮に躍起になっているのでしょうか。
私たちの提携先であるALLAGIさんは、年間約200棟を受注します。
もともと110日あった工期を
3年間で90日に短縮しました。そして
これから2年間で75日にする
と、今期の経営計画で発表をしました。
ALLAGIの工務部長と話すと、
「非常に厳しいが、他社はできている。
絶対にできると信じてやり切るのみ!」
と、なんとしてもやり遂げる強い意志が返ってきました。
110日かかっていたことを75日にすることが
どのくらいキツいのかは察しが着きます。
なぜ、そうまでして期間短縮を狙うのか?
工務店及びその他にどんなメリットがあるのか。
私なりに少し考えてみました。
大きく分けると3つあると思います。
①短い=お客様が喜ぶ
②短い=工務店が儲かる
③短い=下請けが儲かる
こんなところでしょうか。
①短い=お客様が喜ぶ
これは分かりやすいですね。
スーツをオーダーで作った時に待つ気持ちに似てます。
一旦意思決定したお客様は早く住みたい、と誰しもが感じます。
遅いとクレームになることはあっても、
早くてクレームになることはありませんよね。
②短い=工務店が儲かる
まず売上の視点で考えてみましょう。
経済学にこういう考え方があります。
「生産能力=売上能力」
生産する力がない会社は、受注が順調でも建てることができないので
売上げが上がらないということですね。
注文住宅は勿論、分譲住宅だとさらにその売上は加速します。
次に人件費の視点で考えてみましょう。
分かりやすく例えるために、
工期60日で建てられる会社と工期180日でしか建てられない会社で比べます。
・両社とも毎月5棟受注できる力がある
・従業員も同じ数
ということで比較しましょう。
毎月5棟の受注があります。
つまり毎月着工が5棟あるわけです。
毎月5棟着工があるということは、工期が長いほど
「施工期間の被り」が出てきます。
工期60日=2ヶ月の被り=10棟を同時管理
工期180日=6ヶ月の被り=30棟を同時管理
ということは、1人の現場監督が5棟まで同時管理ができるとして、
工期60日であれば、現場監督は2名で回せますが、
工期180日であれば、現場監督は6名必要になります。
人件費3倍違いますね。
最後に「家一棟が月で稼ぐ利益」という視点はどうでしょうか。
2000万売上、内利益600万の受注があったとして
工期60日であれば、利益600万/2ヶ月(60日)=300万/月
工期180日であれば、利益600万/6ヶ月(180日)=100万/月
家一棟が月あたりに稼ぐ金額も3倍違いますね。
ということで、少なくとも
『売上・人件費・利益の観点』からみて
工期短縮は工務店にとって大きなメリットがあります。
③短い=下請けが儲かる
さて、①・②はまだしも一番疑問なのは③ではないでしょうか。
では、そのカラクリを紐解きます。
現場に180日入らなければならない大工さんと、
現場に60日しか入らなくて良い大工さんでは
どちらが儲かるか?
という話です。
大工さんは「坪請け」が最もメジャーです。
地域にもよりますが坪35000円から38000円がストライクゾーンです。
坪35000円で30坪の家を建てるとして、
1棟を完成させるのに大工さんが稼ぐ金額は
1050000円ということになります。
大工さんが年間8棟回せる家か
大工さんが年間4棟しか回せない家か
によって大工さんの収入はこうなります。
8棟=8400000円(年収)
4棟=4200000円(年収)
つまり、60日で施工できる家と
180日で施工できる家では2倍収入が違うということです。
これらは材工賃で施工する全ての会社が該当します。
基礎、屋根、電気、外壁、・・・といった業種です。
このような話になると
「工期遅い組」から必ずこのような答えが返ってきます。
「75日にすると品質が落ちるのでは」
・・・
これもALLAGIさんに確認しました。
すると回答は非常に明快でした。
『品質が良い会社ほど、工期が短い』
私も一瞬戸惑いました。
しかし、冷静になって別業界で考えてみると
納得がいきます。
先日、不動産探しをしているときも
「対応が遅い会社は提案内容が悪い」
「レスポンスが早い会社ほど提案内容がいい」
ウェブマーケティング会社に問い合わせしたときもそうです
「初動が遅い会社は、その後の対応も遅く、納品も遅く、内容も悪い」
「初動が早い会社は、その後の対応も早く、納品も早く、内容も良い」
そりゃそうです。早い会社は
『いかに早い対応をするか』
を常にMTしているし、その考える力が
『顧客満足に向かわないわけがない』のです。
私が、昔電気工事の職人をしていたときもそうでした。
「腕がいい職人は早くて綺麗」
そして、平凡な職人に比べて例外なく、
「3倍は仕事のことを考えている」
ということでした。
③については工期を短縮できれば、
職人のコスト交渉にもつながるということですね。
そういった意味で②の工務店の利益は計り知れません。
年間棟数が少なかったとしても
工期短縮による恩恵はたくさんあります。
是非力を入れて、工期短縮の
研究を始めてみてください!