決断力
決断力
代表の伊藤です。
私の大好きな小説で
「坂の上の雲」という司馬遼太郎の作品があります。
(本ブログ2回目)
明治初期の実話を元にした歴史小説で、
主人公は秋山好古・秋山真之・正岡子規の
3名になります。
この時代で活躍された人たちの面白さは、
お国のために「自分は何ができるか」
を、その当事者として真剣に考え、
自分個人が何かをしなければ、日本が諸外国の植民地になってしまう、
と本気で考えていたところにあります。
この物語の主人公の一人である
秋山真之(さねゆき)もその考えを強烈に持っていた一人であったようです。
秋山真之は、当時海軍世界最強と呼ばれたロシアのバルチック艦隊を
彼が独自に発案したT字戦法にて圧倒して撃破
(日本軍3隻沈没に対しロシア軍20隻以上沈没)します。
これらの戦績もあって日本軍は日露戦争に奇跡的大勝利を収めるわけです。
秋山真之は中佐だったため考案したT字戦法を
決断する立場にありません。決断したのは当時海軍司令長官であった
東郷平八郎です。彼は徹底して秋山真之の作戦を信用し、
そのほとんどの作戦を実行に移したと言われています。
日露戦争前の日清戦争にて秋山真之は自分の命令のせいで
部下を死なせてしまった苦い経験があります。
海軍をやめた方がいいのではないか?
と考えていた秋山真之は東郷平八郎に相談をします。
「どうしたら最良の決断をできるのでしょうか」
それに対して東郷平八郎はこう答えます。
「決断は一瞬だ。だが、
《その決断を正しいものとするためには
血の滲むような努力を続けなければならない》
私も未だその答えを探している途中だ」
悩んだ結果、秋山真之は海軍を続け、
その言葉を胸に様々な努力を続けT字戦法を生み出すことになります。
私はこの話のくだりが最も好きです。
なるほどその通りだと心の底から思いますし、
こういう言葉と出会う為に本を読んでいるとも言えます。
日本の未来を背負っている秋山真之や東郷平八郎とは
重責が違いすぎて比喩するのが滑稽ですが
経営判断も共通するところがあります。
例えば、商品の値決めもそのひとつです。
京セラの稲盛元会長がおっしゃられるように
売上を最大化し、経費を最小化することが経営の大原則
かと思いますが、
売上を最大化する1つの要素に
「値決め」があります。いくらにするか?その最終判断は
中小企業において経営者が決断するでしょう。
また、大きな業務提携を交わす場合もその判断は
経営者がします。大小メリットデメリットあれど
会社の未来を見据え、決断するのです。
しかし、小心者の私はこういう時いつも考えます。
《どんな決断が最も正しいのか?》
必ず会社にプラスになれば迷いはないのですが
何千万・何億とマイナスになる可能性も大いにあります。
間違いと分かれば方向転換し、対策を打ちますが
当然できればそのようなフラフラした経営はしたくありませんし、
最短で最大の効果を生みたいのはどの経営者も同じでしょう。
そしてこう思っていました。
「優秀な経営者は一発で
バシッと芯をついた決断をするんだろうな。。。
私みたいにフラフラ迷ったりしないんだろうな。。」と。
しかし、坂の上の雲を読み考え方が変わりました。
決断力は先天的なものだけではない。
「努力や経験の質」によって「後天的に磨けるもの」ではないか。
私たちには、一つの決断に当たって幾つかのカード(選択肢)があります。
どのカードを選ぶかは経営者の普段の努力の積み重ねや経験の質によって
変わります。何度も何度も切るわけですから、人によって
最後行き着く先は(その切り方によって)全く変わるでしょう。
私は経営者としてまだ3年半です。
まだまだ、その選択・判断の質を磨かなければなりません。
慢心せず、
見識を広げ、
素直になって学び、
いつか待つ大きな決断の時に
「この判断のために決断力を磨いてきたんだ」
といえる、
「自分にとって納得のできる最良の決断」
ができるように
努力していきたいと思います。