と、ある開拓者の話
≪自分にしかできないことに挑戦する≫
誰でもできる仕事はしない。
自分にしかできないことに挑戦し、
乗り越えたら自分以外でもできるように
仕組化することが幹部の仕事である。
当社の≪幹部方針≫の1つです。
当社では社員全員が常に携帯している手帳があります。
この手帳には、事業計画や人事に関する情報、
毎月の成果報告書などがまとまっていますが、
同様に企業方針も記載されています。
企業方針は、上記の他にも教育方針やサポート方針など、
カテゴリー別に10種類に分けられ、
計65個の項目が書かれております。
これらの方針が、
社員の行動・思考の一つのコンパスになっています。
さて、冒頭の方針をご覧いただき、
どのように感じますか?
「うんうん、いいこと言うな」
「確かに、その通りだな」
こんな感想が多いかと思います。
ところが、実際にこのことを実行しようとすると、
どんでもなく難しいことだということに気づきます。
まず、
「自分にしかできないこと」と書かれているので、
「他のスタッフにはできないこと」であると分かります。
そして、「挑戦する」と書いてあることから、
その本人もすでに当たり前のようにできることではなく、
かなりの困難を伴う内容であることが分かります。
まだ社内で誰もやっていないことをやる。
0から1を生み出す。
これが1つ目のミッションです。
そして、2つ目のミッションは、
「乗り越えたら自分以外でもできるように仕組化する」
です。
特別なスキルを必要とせずとも、
同等の精度や効率を保つことができるようにしていく必要があります。
この2つのうちどちらかを実行するだけであれば、
特に問題ありません。
0~1を生み出す仕事に対しては、
やりがいを感じる人も多いことでしょう。
私も社内の誰もやったことのない仕事は、
できるだけ率先して実行していこうと思っています。
また、仕組化することも当たり前のことであり、
自身のコピーを作っていくためには避けて通れない道と言えます。
日ごろから実行されている管理者の方も多いと思います。
ところが、この2つを同時に満たすことは非常に難しく感じます。
分かりやすく物語にして例えてみます。
貧しい村がありました。
食べるものはアワやヒエなどの雑穀のみ。
このままでは食料が足りないので、
1人の男が未開の地に行き、作物を育てようとしました。
土を耕し、水を引き、雑草を取り除き、虫を追いやり、
来る日も来る日も作物を育てるために尽力しました。
最初は上手くいかず、何度も失敗しては理由を考え、
改善してまた実行する。
誰にも相談することなく、何度も何度も繰り返しました。
そして、ようやく稲が育ちました。
これで飢えから解放されます。
男は今までのデータをすべてまとめました。
肥料に適しているのは、
与える水の量は、
収穫の時期は、など膨大な資料です。
これで次回以降も同じように収穫することができます。
その状況になって村人がやってきて言いました。
「あとは別の人間がやるからここはもういいよ。
この資料の通りにやればいいんだろ。こんなの簡単だ。
それより、次は麦を作ってね。」
男はまた1人で未開の地に行き、
土を耕すことから始めました。
そして引き継いだ村人たちは、
男が残した膨大なデータを見ながら農作業を行ったので、
楽に迷うことなく育て上げることができました。
少し大袈裟に書いてしまったかもしれませんが、
この方針の意味することは伝わったのではないでしょうか。
当社では幹部になる以上、
このことを意識して行動しなければなりません。
このように、多くの会社が持つ企業理念や社是、企業方針などは、
読むだけならだれでも意味を理解できます。
しかし実行しようとすると非常に難しいものが多いと思います。
だからこそ、文字をなぞるだけでなく、
意味を深く考えなければなりません。
経営者は社員にその意味をしっかりと伝えなければなりません。
社員はしっかりと理解し、日々の行動に活かさなければなりません。
その両方を満たすために、
当社では、毎日の朝礼で行っていますが、
「考え方」に関する共有と浸透をする時間を作ることをお勧めいたします。
後藤