人事考課の落とし穴
人事考課を行う際に評価者が陥りがちな注意点に関して、
3つのポイントをお伝えいたします。
人事考課はたとえ制度自体がしっかり設計されていたとしても、
評価者の意識やレベルが伴っていないと成立しません。
もちろん契約数や売上のように、
目標に対しての結果を定量的に査定できる項目であれば問題ありません。
だからこそ、評価制度の設計段階では、
できる限り定量的に評価できる項目を増やす工夫が重要となります。
しかし、少なからず評価者の主観が入ってしまう項目もあり、
その際は評価者が正しい査定ができるかどうかが、
人事考課を有効活用できるかどうかの重要なポイントとなります。
例えば、ある評価項目の査定を4段階で行う場合、
4:模範的な成果・行動
3:概ねできている
2:できていない点がある
1:全くできていない
のようにある程度の基準を設けることが一般的です。
しかし、あくまでも基準であり、
その基準の範囲は人によって異なるため、
同じ成果・行動であっても評価者によって結果が異なってしまいます。
これでは被評価者の納得を得ることは難しく、
不平不満を募ってしまいます。
本来、人材の活性化を目的とした人事考課のはずが、
逆にエンゲージメント低下の要因となってしまっては本末転倒です。
それでは、特に評価者が意識すべき3つのポイントをお伝えしていきます。
1 人ではなくコト(成果・行動)を評価しなければならない
人事評価において人そのものを評価してはなりません。
その人がもたらす成果や行動を評価します。
そうでない場合、低評価を受けた社員は「人格否定」されたと感じてしまいます。
人事評価は人材を裁き、罰を与えるものではありません。
その人の成果や行動における課題点を明確にし、
改善を図ることが目的です。
低評価をつける場合にも、
「あなたは○○だから低評価」
というように人を評価するのではなく
「あなたの行った業務の○○の行動は良くなかったから低評価」
というように成果や行動を評価しましょう。
2 評価結果の要因を説明できなければならない
評価者は被評価者に対して、「なぜその評価結果になったのか」を
説明できなければなりません。
例えば、評価項目の一つに
・日頃から問題解決意識をもって改善施策の立案や実行をおこなっているか
というような評価項目があったとします。
被評価者は日ごろから消極的な思考で、
積極的に改善に取り組むタイプではないようであれば、
もちろん低評価と査定をする人が多いと思います。
この場合に、なんとなくの印象で低評価とするのではなく、
・○○業務において、明らかに課題点があるにもかかわらず半年間放置した
・○○業務において、期初の段階で改善を図るよう指示したが改善案の提出がなかった
・改善案を起案したが実行されなかった
など、明確な事柄による説明ができる状態である必要があります。
また、上記のように毎回説明できる状態であると、
主観の占める割合の大きな評価項目であっても、
下記のようにある程度明確な基準が出来上がってきます。
4段階評価の場合の例
4:期間において課題改善を起案・実行し、改善及び成果向上につながった
3:期間において課題改善を起案・実行し、改善につながった
2:期間において課題改善を起案・実行したが、改善にはつながらなかった
1:期間において課題改善を起案・実行しなかった
3 被評価者の立場を考慮した上で評価しなければならない
まずはじめに、
査定を行う際に絶対にやってはいけない(しかしやりがちな)ことをお伝えします。
それは、自分(評価者)を基準に評価をすることです。
例えば、上記の例を取り、
・日頃から問題解決意識をもって改善施策の立案や実行をおこなっているか
という項目に対して、
「私は毎日のように課題改善を考えているが、部下は言われないと考えない」
などと思い、低評価をつけてしまう評価者がいますが、これはやめましょう。
評価者と被評価者は立場が違います。
評価者の立場であれば、常に部署の改善を考えるのは当たり前です。
また同様に、
「私が若いころはもっと○○だった。それに比べて…」
というのもやめましょう。
そのころとは時代も環境も異なります。
そのせいで正しい評価ができなくなってしまいます。
人事評価を行う際には、
- いま、この期間において、
- その人の立場を考慮して、
- 会社が求める成果・行動
を基準に査定を行う必要があります。
新入社員には新入社員に求める成果・行動を、
リーダーにはリーダーに求める成果・行動を基準に査定しましょう。
以上、人事考課における注意点を3点お伝えいたしました。
評価をする立場の人は参考にしていただければ幸いです。
後藤