大ヒット漫画より人事評価制度の必要性を学ぶ
約2200年前の中国。
ある二人の男が牢屋越しに「法」について対談しました。
A氏「法とは何か?」
B氏「法とは刑罰をもって人を律し治めるもの」
A氏「違う。刑罰は手段であって法の正体ではない」
B氏「では法とは何か?」
A氏「法とは…」
さて、この後に続くA氏の回答を想像してみてください。
これは現在大ヒット連載中の歴史系漫画「キングダム」のワンシーンです。
圧倒的なスケールとド迫力の戦闘シーンだけでなく、
ときおり見せる政治的論争や深く考えさせられる答弁などによって、
4000万部を超える大ヒットを実現しています。
さて、先程の対談はあくまでも漫画内の話です。
実際にこのような対談があったかどうかは分かりません。
しかし、秦という国は元々複数の国に分かれていた中華を統一した初めての国です。
跡継ぎ問題によって長続きこそしませんでしたが、
あの広大な領土を一つの国が治めるということは容易ではありません。
それを可能にした一番の要因は他国を圧倒する軍事力ですが、
それともう一つ、大きな要因があると言われています。
それは、秦は中華初の法治国家を築いたという点です。
それまでは、王を代表とする権力者が法でした。
権力者が死罪と言えば死罪。
権力者が無罪と言えば無罪。
功績をあげていなくても、権力者が気に入れば出世し、
功績をあげていても、権力者が気に入らなければ出世しない。
そのため各地で権力者による独裁や賄賂などが横行し、
秩序を保つことが難しかったのです。
しかし秦は法が国を治める法治国家を実現し、
例え権力者であっても法を破れば刑罰の対象となりました。
現代では当たり前のことですが、
当時では革命的な発想です。
これを1つの会社に置き換えて考えてみましょう。
そして法を人事評価制度に置き換えてみましょう。
法がない会社は、権力者=社長が法です。
社長が良いと言えば良い。
社長が気に入った人材であれば、例え能力がなくても出世する。
このような状況ですね。
これでは、
社長の顔色を見てYESとしか言わない人材が増えたり、
成果を出している人材が正当な評価を得ることが出来なかったり、
そのため自身の評価に不満を抱えたり、
いわゆる不当人事が横行することになるでしょう。
法によって国を治めるように、
給与制度や評価制度などの人事制度を整備することによって、
会社の秩序を保ち社員の力を最大限引き出すことが可能となります。
さて、話を戻します。
冒頭の対談の答えですが、A氏はこのように答えます。
「法とは願い。国家がその国民に望む人間の在り方の理想を形にしたもの。」
法とは決して人を罰するために存在するものではありません。
法とは人を正しい道を指し示し導くものです。
私は現在、様々な企業の人事制度の作成をしておりますが、
評価制度の説明をすると社員の多くは後ろ向きな姿勢を見せます。
自身の仕事が査定される、粗探しされる、できていない部分を詰められる…
など、不快な印象を持たれます。
しかし、その制度は社員を罰するためのものではありません。
社長の願いであり、社員に対して望む在り方の理想を形にしたものが評価制度です。
あなたにはこのような業績、行動特性、価値観を望んでいます。
あなたにはこのような人財になって欲しいのです。
という願いやメッセージを込めて、評価制度を作りましょう。
そして評価制度に込められた願いをしっかりと社員に伝えましょう。
社員は求められていることや期待されていることが明確になります。
当初は後ろ向きだった評価制度も、目標や行動の指標となり、
成果を上げるための大きな武器となるでしょう。
法によって国の秩序と経済が保たれているように、
評価制度によって会社の秩序や業績が保たれます。
制度が不十分で、社長の独断によって人事評価が決まるという会社様は、
健全且つ経済的な国家を築くために、
法治国家を目指してみてはいかがでしょうか。
後藤